2025/03/21 10:15
中国・内モンゴル自治区 銀都インドゥ鉱山のフローライト
はじめに
内モンゴルのフローライトは、世界中の鉱物コレクターや研究者の間に知られるようになっています。中でも特に有名なのが、チーフォン市ヘシグテンにある銀都(インドゥ)鉱山。この鉱山から採れるフローライトは、美しい色合いやユニークな結晶構造が魅力です。
今回は、銀都(インドゥ)鉱山の地質的背景や、ここで採れるフローライトの特徴、採掘方法について詳しく紹介します!
銀都(インドゥ)鉱山の地質的背景
銀都鉱山は、中国・内モンゴル自治区の北部に位置し、「北中国クラトン」と呼ばれる約25億年以上前の古い地質帯の一部です。この地域は長い地質の歴史の中で、何度も火成活動や変成作用を受け、鉱物資源が豊富に形成されました。
特に銀都鉱山のフローライトは、白亜紀(約1億8000万〜1億年前)の「燕山造山運動」に関連する花崗岩の貫入によって形成されたものです。この時期にマグマから放出された鉱物を含む熱水が、周囲の堆積岩や変成岩と反応しながら冷却・結晶化し、フローライトが成長しました。
銀都鉱山のフローライトの特徴
銀都鉱山のフローライトは、その鮮やかな発色や多彩な結晶形で知られています。特に以下のような特徴が見られます。
1. 色のバリエーション
銀都鉱山のフローライトは、濃い紫、青、緑が主流で、一つの結晶の中にグラデーションのような色の変化が見られることもあります。
珍しいものでは、ピンクや赤みがかったフローライトも産出。これは、微量の希土類元素の混入や自然放射線の影響によるものと考えられています。
紫外線(UV)を当てると、強い青や紫色に蛍光するものがあります。これはフローライトに含まれるイットリウムやユウロピウムの影響です。
2. 結晶の形状
立方体(キューブ)、八面体(オクタヘドロン)、十二面体(ドデカヘドロン)など、さまざまな形の結晶が見られます。
「ホッパー成長」と呼ばれる、結晶の縁が成長して中心が空洞化する特殊な形状もよく見られ、鉱物好きにはたまらない特徴の一つです。
また、二つの結晶が組み合わさった「貫入双晶(ツインクリスタル)」もよく見られ、コレクターに人気があります。
3. 他の鉱物との共生
フローライトの周囲には、石英(クォーツ)、方解石(カルサイト)、硫化鉱物(黄鉄鉱や方鉛鉱)などが共生することが多いです。
表面に微細な水晶(ドゥルージークォーツ)が覆っているものもあり、キラキラした輝きが楽しめます。
銀都鉱山での採掘方法
銀都鉱山では、伝統的な手掘りと近代的な機械掘削の両方が行われています。
1. 露天掘り(オープンピット)
地表近くにフローライトの鉱脈がある場合は、露天掘りが行われます。
大型の重機(ブルドーザーやショベルカー)を使って表土を取り除き、フローライトの層を露出させます。
掘り出した岩石はトラックで運ばれ、選鉱場でさらに選別されます。
2. 地下採掘(アンダーグラウンドマイニング)
鉱脈が深い場所にある場合は、地下に坑道を掘り進める方法が取られます。
「ルーム・アンド・ピラー」方式や「カット・アンド・フィル」方式などの技術が使われ、安全に採掘が進められます。
地下採掘では、換気設備や排水システムが重要で、作業環境の維持が欠かせません。
3. 手作業による選別と加工
採掘されたフローライトは、職人が手作業で選別し、良質な結晶を慎重に選び出します。
高品質の標本は、クリーニングと研磨を施され、コレクター向けに販売されます。
ジュエリー向けや産業用途向けに、サイズ別や透明度別に仕分けされることもあります。
まとめ
銀都鉱山のフローライトは、鮮やかな色彩、独特な結晶形、そして奥深い地質学的背景を持つ魅力的な鉱物です。数千万年にわたる地球の営みの中で形成されたこれらの美しい結晶は、まさに自然のアートといえるでしょう。
現在も銀都鉱山では高品質なフローライトの採掘が続けられてはいますが、美しい結晶がいつまでも出続けるかは不明です。もしチャンスがあれば、この素晴らしいフローライトを手に取って、その魅力をじっくり楽しんでみてください!