2025/03/27 17:45
はじめに
鉱物コレクターなら、一度は「パイロモルファイト(緑鉛鉱)」の名前を聞いたことがある方も多いはず。この鉛を含むリン酸塩鉱物は、鮮やかな緑色や黄色の結晶が特徴で、鉱物標本としても非常に人気があります。
その中でも、中国・広西チワン族自治区にある「ダオピン鉱山(Daoping Mine)」は、最高品質のパイロモルファイトが採れることで有名。この鉱山から産出する標本は、見た目の美しさ、結晶の形、そして希少性の高さで、世界中のコレクターを魅了しています。
今回は、そんなダオピン鉱山のパイロモルファイトについて、地質的背景や採掘方法、そしてなぜここで採れる標本が特別なのかを掘り下げてみましょう!
パイロモルファイトとは?
パイロモルファイト(Pb₅(PO₄)₃Cl)は、鉛鉱床の酸化帯で形成される鉱物で、アパタイトグループに属します。六角柱状の結晶やブドウの房のような集合体を作ることが多く、透明感のある緑色や黄色が特に人気です。
鉱物的に面白いのは、鉛を多く含むために非常に重いこと(比重6.5~7.1)。また、セリウムやヒ素が結晶構造に入ることで色が微妙に変わることがあります。例えば、ヒ素が多いと黄色みが強くなる傾向があります。
また、パイロモルファイトは、時に他の鉛鉱物(セリウス鉱や方鉛鉱)と相互変化する「仮晶(pseudomorph)」を形成することがあり、鉱物学的にも興味深い存在です。
ダオピン鉱山とは?
ダオピン鉱山は、中国・広西チワン族自治区の陽朔(ヤンシュオ)県に位置します。大規模な鉱山とは異なり、主に手作業で標本を採掘する小規模な鉱床です。
地質的背景
ダオピン鉱床は、デボン紀の石灰岩やドロマイト(苦灰岩)に形成された鉛鉱床の酸化帯に位置します。この鉱山では、かつて鉛鉱石(方鉛鉱PbS)が豊富に存在していましたが、地表近くの部分は酸化作用によって変化し、セリウス鉱(PbCO₃)や硫酸鉛鉱(PbSO₄)、そしてパイロモルファイトへと転換しました。
鉛を含む熱水が岩石の割れ目に沿って流れ込み、そこにリン酸を含む地下水が加わったことで、パイロモルファイトの結晶が成長したと考えられています。
採掘方法
ダオピン鉱山では、機械を使わずに手掘りで鉱物を採取しています。これは、結晶が非常に繊細で、掘削機などを使うと壊れてしまうためです。狭い坑道の中で慎重に岩を割りながら、丁寧に結晶を取り出す作業が続けられています。
そのため、採掘量は非常に限られており、高品質の標本はなかなか手に入りません。特に、鮮やかな緑色で光沢のある結晶の迫力ある標本は、人気ゆえに、価格も年々上昇しています。
ダオピン産パイロモルファイトが特別な理由
世界中でパイロモルファイトが採れる場所はいくつかありますが、ダオピン鉱山の標本が特に珍重される理由は以下のとおりです。
鮮やかな色と光沢 - 透明感のあるアップルグリーンやネオンイエローの結晶がキレイ。
独特な結晶形 - 完全な六角柱や、成長の過程で一部がえぐれた「ホッパー成長」の結晶が多く、非常に美しい。
産出量の少なさ - 採掘量が限られており、新しい標本が市場に出ることが少なくなっている。
他の鉱物との共生 - 方鉛鉱やセリウス鉱と共生した標本は、鉱物学的にも非常に価値が高い。
コレクションと市場価値
ダオピン産パイロモルファイトの価格は、結晶のサイズや色、透明度、光沢によって大きく異なります。
最高級品: 鮮やかな緑色・黄色で、光沢が強く、大きな結晶が揃ったものは博物館用です。
中級品: 色や形が良いが、やや小ぶりなものは数万円程度。
手頃な標本: 小さな結晶や、群晶でそれほど目立たないものは1万円以下で購入可能。
まとめ
ダオピン鉱山のパイロモルファイトは、その美しさ、結晶の形、そして希少性の高さから、世界中の鉱物コレクターがコレクションに加えています。
手に入れるチャンスがあれば、ぜひ一つはコレクションに加えたい鉱物のひとつ。緑や黄色の輝く結晶を手に取れば、その魅力に一瞬で引き込まれること間違いなし!